シダ植物観賞

シダ植物観賞

温暖湿潤な日本の気候は、たくさんの木々や草花を育て、美しい緑で私たちを癒してくれます。

そんな日本の代表的な植物が、シダ。世界のシダ植物約1万種のうち、日本で生育しているのは700~900種とかなり多めです。シダに適した環境のため、輸入された鉢物のシダも良く育ちます。

日本の風土の恵みを生かして、シダの美しい葉姿やしっとりした風情を楽しみましょう。

シダ植物とは

トクサ

シダ植物の特徴

たいていのシダは、空中湿度の高い、新鮮な水のたくさんある環境を好みます。気温と湿度の高い梅雨から夏にかけての時期は、シダがいちばん成長する時期。くるくると巻いたやわらかな芽がぐんぐん伸びて、若葉が次々と開きます。成長のスピードはとても速く、朝と夜とで形の違いがわかるほどです。蒸し蒸しと不快な時期も、シダの成長ぶりに目を見張っているうちに乗り切れてしまいますよ。

シダ植物の種類

シダって、けっこう身近にあるものなんです。たとえば、春になると土手に生えるつくし。山菜として食卓に上るわらびやぜんまい。こごみはクサソテツというシダの新芽。日本式庭園の池の周りにニョキニョキと生えている緑色の棒のようなものは、トクサ。茅葺き屋根や古い木の幹からヒュンヒュンと出ているのは、ノキシノブ。お正月に飾るウラジロや、盆栽にするヒバやヒトツバなどもシダ。風鈴をつけた釣りしのぶは、江戸時代からある夏の風物詩です。

シダが日本の生活に溶け込んでいるのがわかりますね。

どういうところがいいの?

ヤワラシダ

くるくると巻いた芽

どういうわけか、シダの芽はみんなくるくると丸まった状態で出てきます。そしてそれが少しずつほぐれて茎や葉が伸びていきます。その様子は、赤ん坊が丸めた手のひらを広げようとしているようなかわいらしさ。この芽にハマると、他の植物では物足りなくなります。

そして、鉢を手元に置いて毎日眺めたり、大きな芽のあるシダを求めて旅したり。シダ観賞の楽しみの一つです。

室内で簡単に育てられる

シダは強い光を必要としません。肥料もほとんど要りません。種類にもよりますが、明るい窓際などであれば外に出さなくても一年中室内で大丈夫。部屋に緑が欲しくなった時はシダを選べば、水やりに気をつけるだけで楽に育てることができます。

ただし、トイレ・玄関・浴室などは、風通しが悪くて光も足りないことが多いので、長期間の育成は残念ながら難しいんです。どうしても飾りたいときは、何鉢かを短期間でローテーションしてくださいね。

緑の空間で癒される

仕事に疲れて帰って来た時、家に緑があると気が休まります。パソコンを長時間使った後も、緑を見て目を休めることができます。飾り方はいろいろ。好みの鉢に植えてテーブルに置いたり、ハンギングバスケットでつるしたり。

和風の鉢に植えて盆栽のように仕立てるのも良いでしょう。壁にかけて飾ることもできます。いろいろな高さに置いて緑に囲まれるようにすると、南国にいるようで寛げますよ。

シダを楽しむには?

ヘゴ

家で楽しむ

多くのシダが観葉植物として愛されています。

安定した人気を誇るのがアジアンタム。黒く細い茎に日の光が透けるほど薄い葉がたくさんついた可憐な姿は、英語では「乙女の髪のシダ」と呼ばれます。弱そうに見えますが、環境に馴染むとどんどん増える丈夫なシダです。

個性的なものがよければ、ヘラジカの角のような形の葉をしたビカクシダがあります。板に付けて壁にかけられているのをご覧になったことがあるかもしれませんね。これも丈夫で育てやすいシダです。

育て方は基本的にどれも同じ。半日陰に置き、日に当てるときは葉焼けしないように少しずつ慣らします。水やりは土が乾きかけたらたっぷりと。戸外に出していたものは、冬になる前に部屋に入れましょう。元気がないときは、葉に霧吹きで水をかけてやると生き生きとしてきますよ。

植物園で楽しむ

椰子の木のような木生シダのヘゴや、一枚の葉が2メートル以上になるリュウビンタイ。大型になるシダ植物は、やはり大きく育った姿を見たいもの。芽もまるまると大きくて、とってもかわいいんです。

夢の島熱帯植物園は見どころが温室の中に凝縮されているので、時間のない時でもさっと訪れることができます。ヘゴなどのシダ類の他、春にはマメ科のヒスイカズラが翡翠色の花を咲かせます。

新宿御苑の大温室には、他ではなかなかお目にかかれないビカクシダの仲間が何種類かあり、ビカクシダ好きには見逃せません。

熱川バナナワニ園は、植物園の温室だけでも8室もある壮大なもの。熱帯シダの部屋にはオキナワウラボシ他、幾種類ものシダが繁茂し、そのどれもが生き生きとしていて圧巻です。ワニ園にはレッサーパンダ、植物園にはマナティもいますよ。

野外で楽しむ

ハイキングや旅行を兼ねて、シダを見に行ってみましょう。

熊野古道のある紀伊半島は、日本有数のシダの宝庫です。熊野古道の両側はコシダやウラジロで埋め尽くされ、葉が日に透けて幻想的な美しさを醸しています。

屋久島も紀伊半島と並ぶシダの宝庫。鬱蒼とした原生林の中に、ヤクシマシダ他多くのシダが生育しています。

静岡県中伊豆にある浄蓮の滝や河津七滝周辺には、ジョウレンシダ(ハイコモチシダ)、ナチシダなどの貴重なシダがあります。

自然保護のため、見つけたシダを傷つけたり採取したりしてはいけません。その場でそっと眺めて、後は写真に撮って楽しみましょうね。

シダのある生活

奥入瀬渓流

シダを意識し始めると、生活が変わります。何でもない道も、シダを探して歩けば楽しく歩けます。雨の日はシダの成長が楽しみになります。家の中におけば、部屋が癒しの空間になります。

シダを身近に感じながら、うるおいのある生活を送ってくださいね。