銅版画(エッチング)
西洋の代表的な絵画というと油絵が多いですが、銅版画の作品も数多く残されています。版画は同じ作品を、何枚も刷ることができるので、広範囲で有名画家の作品を目にすることができます。
ニードルという先の尖った道具を使用しての版作りは、少し手間のかかる作業です。しかし、完成してしまえば同じ作品を何枚も刷ることができるので、楽しく夢中になれる時間です。
では、どのようにして版を作り刷っていくのでしょうか?
銅版画の中でも「エッチング」と呼ばれる技法を例に、紹介していきたいと思います。
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エッチングについて
エッチングって、どんな版画なの?
まず銅板にグランド液(防蝕剤)を垂らして、均等になるようにひいて乾かします。そして、その上からニードルという先が尖った道具で、銅板をひっかいて絵を描きます。その後、腐食液に数分つけて削った部分を腐食させ、インクをのせて刷っていく版画です。
線の強弱は腐食時間で調整することができます。もし追加して描きたい部分があっても、グランド液をひいて削り、腐食するを何度も繰り返すことができるので、後から調整可能な版画なんです。
どんな画家や作品があるの?
デゥーラーやジャック・カロ、そしてレンブラントなど、人物主体の光を追求した洋画家がいます。そして日本にも、中村忠良さんの自然と静物の細かな表現の作品や、南桂子さんの小鳥や少女など、自然をテーマにした作品などが有名です。
銅版画(エッチング)の魅力
インクや線で色んな作品ができる
銅版画は細かな点と線や、墨のような黒い諧調で、版画の世界が表現されます。そのため、インパクトのある楽しい作品が仕上がります。
黒インクを使用すると、まるで水墨画のように白黒の明暗がはっきり分けられ、濃い線や薄い点などの黒の濃淡により、自分が表現したい物を強調することができます。色彩を楽しむというより、黒い点や線の描写を楽しむ感じです。
またカラーインクを使用すると、世界観が変わって面白みも増してくるので、やってみる価値ありです。
刷る作業も楽しい!
版を1枚作ってしまえば、何枚でも刷ることができます。インクをのせてプレス機を回す作業が、なんだか職人になったような気分で楽しくなりますよ!
刷り上がった作品を見たら、達成感ともう少しこうした方が良いかな?という完成度を求めたくなる気持ちが出てきます。そうなると、ますます刷りの作業が楽しくなります。
プロセスを楽しむ
版画は刷り方次第で、仕上がりの完成度が変わります。インクの拭き取り加減でも、濃くなってみたり、薄くなってみたりと変化します。プレス機に版を置いて、上から紙をセットし、ローラーを回して刷り終わるまでが一連の流れです。
そして刷ってみるまで作品の仕上がり具合がわからないのが、楽しみの一つ。是非その楽しみを体験して、自分だけのオリジナル版画を仕上げてみてくださいね!
銅版画のはじめ方
まずは版画教室や、美術館などの工房で
ご自分でも道具や材料を揃えれば刷る作業はできますが、特殊な溶剤やインク、プレス機などが必要です。
まずは全てが揃っている版画教室や、美術館などの工房を利用しましょう。負担も少なく、やり方を教えてもらえるので、手法で悩むことが少なく作品に集中できるでしょう。
道具や材料はどんなものが必要?
- 銅板
- ニードル(先が尖った版を削る道具)
- インク
- 液体グランド
- リグロイン
- プレス機など
費用はどれくらい?
銅板はサイズによって価格が様々で、1枚9×12㎝で600円、24×36㎝で2,500円くらいします。作品の大きさによって、費用は大きく変わります。
プレス機など小さいものでも4~5万円はするので、全て自分で揃えるのであれば、6〜7万円はかかると思います。
版画教室や工房などを利用すれば、材料代は1回1,000円以内で済むので、オススメです。
まとめ
美術館やギャラリーなどで銅版画の作品を観た時に、「他の絵画と比べて作品がなぜ小さいの?」と疑問に思われたことがあるかもしれません。
油絵や水彩画の作品は、100号サイズの絵画が普通に飾られていますが、銅版画の作品は制作過程で小さな作品しか作れません。重たい銅板に絵を描き、腐食してからインクをのせて刷る工程は、大きい作品では無理があるためです。つまり、小さな世界にインパクトのある作品に仕上げていくのです。
近くで覗き込みながらの鑑賞も、技法の凄さや作者の伝えたい事の発見ができて、楽しみ方の一つになると思いますよ。
他の絵画では味わえない、版画の世界をぜひ体験してみてくださいね。